Movies
野球と映画こそが文化である
May 07, 2011 12:42
映画『フィールド・オブ・ドリームス』"Field of Dreams"は、親と子、過去と現在が、野球を通してつながるというテーマが共感を呼び、代表的な野球映画のひとつに数えられています。レイ・キンセラは、妻と娘との3人で、アイオワでトウモロコシ農家を営んでいます。畑仕事をしていたレイは、"If you build it, he will come.(それを作ればあの男はくるだろう)"という声を耳にします。誰がどこから語りかけてきたものなのか。謎の声が気になって仕方のないレイでしたが、ある日の夕方、自分のトウモロコシ畑の真ん中に、照明であかあかと照らされた野球場が浮かび上がっている光景を目にして、はっと気がついた。レイは畑をつぶして野球場を建てましたが、あの男はいっかな現れようとしません。収入は減る、周囲の人たちから陰口を叩かれる。レイたち家族の暮らしは次第に厳しくなってきます。そんなある晩、不思議なできごとがレイの野球場でついに起こったのでした。
映画の中でジェイムズ・アール・ジョーンズ扮する作家テレンス・マンが、アメリカという国は急速に変化してきたが、ただ一つ野球だけは変わっていないと語る場面があります。建国から230年という歴史の浅い国が誇ることのできる独自の文化は、野球とハリウッド映画との二つだとよく言われますが、『フィールド・オブ・ドリームス』はその二つが見事に結びついた佳作と言っていいでしょう。(2007年5月9日)
偏見を乗り越えて
April 24, 2011 14:16
『タイタンズを忘れない』"Remember the Titans"は、実話に基づく映画です。70年代前半、ヴァージニア州アレクサンドリアの二つの高校、ヨーロッパ系アメリカ人だけが通う学校とアフリカ系アメリカ人だけが通う学校とが統合されました。公民権運動が北米大陸全土で展開されていた時代とはいえ、南部のヴァージニアには依然としてアフリカ系アメリカ人に対する偏見が根強い。そこに、ノースカロライナ州の高校からアフリカ系アメリカ人監督ハーマン・ブーンがアメリカンフットボール部に赴任します。そしてブーンが、州の教育委員会の後押しで現職のヨーロッパ系アメリカ人監督ビル・ヨーストと交代したことで、街中が騒然となります。部員の間にも険悪な空気が漂いますが、そういうこだわりのまったくないルーイ・ラスティクや、自由な雰囲気の西海岸から転校してきたロニー・"サンシャイン"・バスが加わったことで、選手たちはお互いを理解しあうようになり、ティームの結束は次第に強まっていきます。そしてついにシーズンが開幕。アフリカ系だろうとヨーロッパ系だろうと関係のない、一つのティームとして快進撃を続けるタイタンズの姿に、地元の人たちは、お互いが助け合い、支え合うことのたいせつさを教えられるのでした。
『タイタンズを忘れない』はアメリカンフットボールの映画ですが、今年4月15日は、MLB初のアフリカ系アメリカ人選手ジャッキー・ロビンスンが、ブルックリン・ダジャーズのメンバーとしてデビューした日から数えて60年目。きょうのこの日を記念するとともに、人種の問題について改めて考えさせてくれるこの映画を紹介しました。(2007年4月16日)
不思議な三角関係
April 24, 2011 14:02
映画『さよならゲーム』"Bull Durham"は、すこぶる現実的な物語です。舞台になっているのは、A級マイナーリーグのダラム・ブルズ。選手、監督、コーチ、ファンなど、そこに集まる人々の人間模様を描いた映画ですが、監督と脚本とを務めたロン・シェルトン自身がデトロイト・タイガーズのマイナーリーグでプレイした経験があるだけに、登場人物のそれぞれが実に生気に満ちています。クラッシュ・デイヴィスは、現役生活も終わりに近づいているヴェテラン捕手。その実績を買われたデイヴィスは、新人の教育係としてダラムに雇われます。デイヴィスが面倒を見ることになったエビー・ラルーシュは、素質は抜群だが、人間の方がまったくなっていない青二才でした。しかし、デイヴィスは不承不承、エビーのお守役を引き受けることになります。一方、国語教師のアニーは、ダラムの有望な若手を見出しては精神面でのサポートをしているという、たいへんな野球好き。アニーもエビーに注目したところで、三人の不思議な関係が始まります。シーズンが進むにつれて三人は少しずつ変化していき、そして、シーズンの終わりはすなわち、この関係に幕が引かれることを意味します。女と男、若手とヴェテラン、来る者と去る者。それぞれの対照が絶妙な佳品です。
余談ですが、この映画には、今ラスヴェガスで最も人気があるといわれるスタンダップ・コメディアンのダニー・ガンズが出演しています。役どころは、デイヴィスたちのティームメイトの一人。プロ顔負けのダブルプレイを決める場面が出てきますが、実はダニー・ガンズは、シカゴ・ホワイトソックスのマイナーリーグでプレイしていた本物のプロ野球選手だったそうです。(2007年4月16日)